生存と環境と|恵方巻から食品ロスを再考

節分に頂く恵方巻きは、年ごとに決まる方位の「恵方」を向いて食べると縁起が良く、願望成就するとされる太巻きで、いまや豆まき以上の国民的行事。一方、売れ残りが大量に廃棄され、問題視されてきました。



日本では「食品ロス」「フードロス」という言葉を使っていますが、現状は「loss」と「waste」の両方。


消費者側にも責任がないわけではなくて、すぐに飽きてしまったり、新しいものを求めたり。買い過ぎて無駄にしてしまったり。もちろん、無駄にならない量だけ買うようにしたり、自宅で作ってみたりもしているけれど。

また、売る側も「予約受付」を始めたり、「短い太巻き」「子供用」など商品を開発したり、「売り切れです、ごめんなさい」とお客さんに理解を求めるポップを出したり。かなり工夫されている様子を感じていましたが・・。

食物の廃棄のテーマは、対象を変えて話題になっては消えていく、そのたびに「もったいない」と感じる気持ちをベースに、販売者と消費者の間の意識や工夫のことばかり・・という印象がありました。
「今度は恵方巻か~」と個別商品が取り上げられることへの、何とも言えない気持ちを感じたものの、「食品が大量に廃棄される社会を見直しする」機運の高まりも感じています。



1.恵方巻をめぐる近年の動き

  • 2019年1月11日:農林水産省が節分の恵方巻商戦が活発になるのを前に、需要に見合った販売をするようコンビニやスーパーの業界団体に文書で要請した。

  • 2019年2月1日:関西大・宮本勝浩名誉教授が、廃棄される恵方巻が全国で約10億円以上になるとの推計結果をまとめた。
    今回の分析では、民間のアンケートなどから恵方巻きの消費人口を約3,213万人と推定、1本800円で計算、販売額を約257億円と見積もった。スーパーやコンビニへの調査などから廃棄率を4%と仮定し、損失額を約10億3千万円と算出。廃棄処分に伴う費用を含めれば、経済的な損失はさらに大きくなるとのこと。また、宮本名誉教授は、売れ残りを従業員に強制的に買い取らせるケースもあると指摘している。

ここで気になったのが、この数値はあくまでも「スーパーやコンビニが仕入れた恵方巻とその廃棄率」なので、廃棄処分に伴う費用を含めれば、経済的な損失はさらに大きくなります。つまり出荷前(製造工場など)のもの、販促用(撮影など)で作ったもの、もっと大きくとらえれば、恵方巻専用とも限らない材料の仕入れ分もあります。
もったいないことをしながら、さらに廃棄で手間もお金がかかっているのが現状ですが、なかなか改善も難しそう。



2.日本の食品ロス
農林水産省の調査によると、日本国内における年間の食品廃棄量は、食料消費全体の3割にあたる約2,800万トン。このうち「食品ロス」は約632万トン。世界中で飢餓に苦しむ人々への食料援助量(平成26年で年間約320万トン)の約2倍。
日本人1人当たりに換算するとお茶碗約1杯分(約136g)の食べ物が毎日捨てられている計算になる。2005年時点での日本の食料自給率は現在39%、大半を輸入に頼っているのに、食べられる食料を大量に廃棄しています。
 

2-1.食品メーカーや卸、小売店、飲食店など
いわゆる3分の1ルール(※1)などでメーカーなどに返品される食品や欠品を避けるために保有し期限を超えた在庫など。これらは品質上、まったく問題ないもの。飲食店では客が残した料理(特に野菜や穀類)などが食品ロスとなっています。
※1: 食品メーカーなどが設定する、加工食品の製造日から賞味期限までの期間を3等分してメーカーからの納品期限や店頭での販売期限を設定する商慣習のこと。


2-2.家庭
食品ロス全体の約半数にあたる年間約302万トンが発生。
食材別で最も多いのは野菜、次いで調理加工品、果実類、魚介類。理由として多いのは「鮮度の低下、腐敗、カビの発生」「消費期限・賞味期限が過ぎた」等。家庭から出る生ごみの中には、手つかずの食品が2割、さらにそのうちの4分の1は賞味期限前にもかかわらず捨てられているそうです。そのほか、野菜の皮むきなど調理の際に可食部を過剰に捨てていることも原因になっています。

2-3.国際的な問題
食品ロスは、国際的な環境や貧困問題ともつながっている。過剰な食料生産や食料の焼却処理はエネルギーを消費し二酸化炭素を排出する。世界の食料廃棄が年間13億トンに上る一方8億人を超える人々が栄養不足に苦しむ矛盾も抱えています。





丁度いいって難しいですよね。




●環境省:食品ロス・ポータルサイト(消費者向け情報)
https://www.env.go.jp/recycle/foodloss/general.html

●消費者庁:食品ロスについて
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/education/





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<編集後記>
私達の両親・祖父母の時代は、本当に食べるものがなくて餓死をした人たちや、食べ物欲しさなどから、悔やまれる行動をせざるを得なかった方が大勢います。戦争もありましたが、震災、恐慌、凶作・・・。日本の歴史を振り返ると、食べることがいかに大変だったか。今は、これまでになく豊かになって、逆にいかに食べないか、痩せるか、いかに無駄にしないかが大変な時代になりました。
だけどそんな時代もいつまで続くかわかりません。


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