暮らし|日本の知恵:収納のミカタ「茶箱」

GWは整理整頓や収納の見直しに、精を出しています(結構、うっぷん晴らしになる)。プラスチックや合板でできた収納はすごく便利で手頃ではあるのですが、とても頼りにしているのが「茶箱」です。


「見せる収納」も話題になったけど、普段は見えなくて収納扉を開けたときにこのラベルが視界に入るのも素敵でしょ?

茶箱は、江戸時代後期より使われてきた業務用茶葉の輸送・保管用の木箱。
無垢の杉材で作られ、内張りは亜鉛鉄板、つなぎ目はハンダやアルミテープ、和紙やクラフト紙。お茶は湿気に弱く、においも吸ってしまうため、パッキンもないのに密閉度が高い作りになっています。今でも職人さんの手作りだそうで、大事に使えば100年以上もつと言われています。


空でも重くて大きいサイズだと7kg前後あるので動かすのは大変だけど、長く大切に保存したいもの、特に虫食いや湿気から守りたいものの保管には本当いいと思っています。
(重たいから、台車を購入して上に乗せているけど・笑)。


我が家の場合、着物や浴衣、冬物の衣類、革製品、LPレコードや古い書籍や資料、アルバムやネガ、祖父母や親の遺品、カメラ、備蓄用食料などを入れています。
ラベルもお洒落なので、布を張るなどのリメイクはせずにそのまま使っています。


茶箱の保管力の高さについてはいろいろなエピソードがありますが、故・三島由紀夫氏の映画をDVD化できたのは、フィルムが大型の茶箱に入れてテープで密閉し保管され、カビや傷みから守られたからとか。




歴史を遡れば、緑茶が海外に輸出されるようになったのは、1853(嘉永6)年にペリーが浦賀に来た頃。また、文明開化の頃、日本が海外で行われる万博などに出展する際にも茶箱を使っていたそうです。
真偽のほどはさておき、紅茶は生の茶葉に傷がついて発酵して偶然できたという説が生まれるほど、当時の船便・梱包事情は非常に厳しい時代。お茶でもお宝でもいい状態を保ったまま現地に届けて、現地の人を驚かせたそう。
梱包も技術だとは思いますが、輸送用の箱を作るために、あらゆる職人技を集結させるという手の込んだことをしていた国は、他になかったのかもしれません。

また、明治~大正時代には、浮世絵の技術を生かした木版画ラベルのデザイン(蘭字)が茶箱に貼られていたそうです。「浮世絵」を世界に広めることにも繋がったものなのに、残念ながら、商業用のため作者不明、国内に残っているものはほとんどないそうです。
※「蘭字」で検索すると素敵な画像がいっぱい出てきます。

こう書くと昔のことみたいですが、たった十数年前まで、大手の海外への運送・引越にも茶箱は使われていたとか。国内に20か所以上あった工場も、現在では静岡県に数件しか残っていないそうです。


我が家の茶箱もおそらく40~50年位前のものじゃないかと思いますが、まだまだ現役です。

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