Thailand|アユタヤ遺跡群(5):象の問題

 ゾウ乗りのアトラクション「エレファント・ライディング」(乗りませんでしたけど・笑)。そのほか、サーカスのように芸をして稼いでいる象もいます。



動物園でしか象を見ることがない日本ではこれを「種を超えた共生・共存」と思う人もいる一方で、現実には「ゾウの飼育上の問題」「役割の問題」「野生象の問題」など、ゾウにかかわる多くの問題は、山積みのようです。

 


 

普段はゾウのそばにいないからわからないのですが、サーカスの周辺では、叫ぶような鳴き声が響き渡っていて、ちょっと辛かったです。



1.タイにおけるゾウの存在と役割
日本では「さん付け」で呼ばれ、優しくてノンビリしていて力持ちというイメージのゾウ。一方、タイでは古来から、戦い、運搬など重要な労働力、同時に神聖なものとして扱われてきました。

①戦闘用
ゾウは、4トンを超える巨体だが、時速約40kmで走ることができる。しかも、オスは結構気が荒いといわれている。その突撃力や破壊力を見込まれ(?)、戦闘用のゾウが多数飼育された。アユタヤ王朝では、馬ではなく、ゾウに乗った王様の一騎打ちの戦いがあったという。

②神聖なもの
日本でおなじみのゾウの姿をした神様「ガネーシャ」など、仏教の中でヒンドゥー教の神々は仏教の守護神と考えられ祀られている。
また、「お釈迦様の生母は、ある夜、白いゾウが胎内に入る夢を見て、お釈迦様を身ごもったことを知った」という逸話もある。白ゾウは神聖な存在であるため、白ゾウをたくさん持つ王=優れた王と考えられてきた。身体の白い部分が一定以上あれば「白ゾウ」として認定され、発見した者は国王への献上することが法律でも義務付けられている。

③労働力:主に林業
1989年に森林伐採が全面的に禁止されるまで、ジャングルでの木の切り出しや運搬など、特殊車両の役割を担っていた。

④労働力:観光、エンターテイメント
「エレファント・ライディング」のほか、サーカスのように芸をして稼いでいるゾウもいる。この業界で働いてきたゾウの老後は大変厳しく、オーナーに捨てられているゾウもいるという。



2.ゾウをめぐる問題(一部)
①絶滅の危機
アジアゾウはジャングルに生息している。森林伐採や開墾による生息地の分断と減少し、象牙を目的とした密猟などにより、絶滅の危機に瀕している。
また、都市部の開発が進むと、衛生上の問題(排泄物)、渋滞の一因になっているという声が上がり、ゾウを無許可で都市部に連れてくることは全面的に禁止となり、ゾウは活躍の場を失ってしまった。こうした生活圏の重なりによって、野生ゾウが民家や自動車を破壊する事件は絶えないという。
以前、サバンナで暮らすアフリカ象についての記事を書いたが、アジアでも同じ問題を抱えているようです。



②躾に厳しい?それとも虐待?
これだけ大きな野生動物は、ちゃんと躾をしなかったらどんなことになるのか、恐ろしさを知っているが故かもしれないが、飼育ゾウの調教方法が、厳しすぎるのでは?虐待では?という声もあるという。
人間の教育でも論争が絶えないので、これはもっと難しい問題といえる。

③病気や高齢でリタイアした象のケア
働けなくなったゾウたちの余生についての問題だが、現在は施設ができている。ホアヒンという町には「Hutsadin Elephant Foundation(フッサディン象保護基金)」という、高齢や病気でリタイヤした象の世話を目的として作られた施設がある。
他にも、過酷な労働で弱ったゾウや、森林で群れからはぐれてしまったゾウを集めた国立・私設の保護センターがタイ各地に存在する。これらの施設は、環境保全などを学べる観光地(エコツーリズム)にもなっている。

フッサディン象保護基金:
https://www.hutsadin.org/blog




*  *  *  *  *  *

<編集後記>
人間と動物の共存は、どこの国でも、どんな動物とでも、非常に難しい問題があると感じています。一方、人間同士はどうでしょうか?煎じ詰めると自分以外の生命との付き合いの問題にも思えます。
ちなみに、ゾウが好きとか、ゾウの問題に強い関心があるわけではないのですが、なぜかまたゾウの問題を記事にすることになりました。これもご縁かなと思っています。


●拙記事:映画|地球交響曲第一番(1992年・日本)+追記あり
https://www.4yiweb.com/2012/10/movie-gaia1.html



コメント